知られていない事実
介護の現場でも、胃ろう(経管栄養)や点滴で栄養を補給することがあります。
看護師さんが、経管栄養や喀痰吸引の処置をするのが主ですが、場合によっては資格を持った介護士がやる事もあります。
口腔ケアに関しては、介護士もできます。
口から食事をしなければ口の中は汚れないと思われがちですが、実はまったく逆で、口からまったく食べられなくなると、細菌数が増加するようです。
口腔ケアの不備が引き起こすもっとも代表的な死亡原因は誤嚥性肺炎。
知らず知らずのうちに唾液(細菌)が肺に入り込み引き起こす肺炎で、「肺炎の発症率」は増加し続けており、高齢者の肺炎の多くが誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎は、日本人の死因第6位にランクインし、死亡者の97%が70歳以上と、いまや高齢者にとってがん・心疾患・脳血管疾患の3大疾患にも劣らぬほどの大きな死亡リスクとなっています。
口の中は37度ほどに保たれ、唾液によって潤い、食べかすが停滞しやすいことから、細菌(常在菌)がとても繁殖しやすいです。
歯垢(しこう)の70~80%は細菌、20~30%が多糖体と唾液中のタンパクで構成されており、歯垢1ミリグラム中に数億もの細菌がいます。口腔内の細菌数は非常に多く、
便と同じくらいのレベルといわれています。
口腔ケアの必要性
口の中の細菌は、堆積し続けるとバイオフィルムという強固な膜を作ります。
このバイオフィルムは、うがいや薬だけでは除去するのが難しいです。
これは、台所の流しの三角コーナーに生ごみを入れておくとヌルヌルとした汚れが付いて、水道水の水を強くかけてもヌメリは取れないのと同じです。
タワシやスポンジなどでこするとヌメリは取れますよね。
つまり除去するには、歯と口の清掃、歯磨きや口腔ケアが不可欠だということです。
口腔ケアは、虫歯や歯周病などを予防するのみならず、飲み込む機能や認知機能などを高め、さらに誤嚥性肺炎の発症を抑えるなど、高齢者の病気の予防に関わります。
咀嚼(そしゃく)(噛むこと)は脳に刺激を与え、脳の血流を増加させることがわかっており、歯がなくても噛む習慣はとても大切です。
口から食べることを継続していれば、唾液の分泌や食べ物とともに菌が移動していく事により、口の中の細菌は正常な状態をある程度維持しやすいですが、経管栄養や点滴で栄養を補給する状態になると、口腔内は乾燥して菌が増殖しやすくなってしまいます。
唾液の呑み込みの際に誤嚥したりするリスクや、経管栄養が逆流したりすることもありますから、とくに口腔ケアは重要だと思います。
舌磨きは、歯ブラシではなくブラシ素材の違う舌を傷つけないブラシを使う工夫も必要です。
口腔内の食べかすを取り除いたりブラッシングで食べかすやプラークを落とし、スポンジや口腔用ティッシュで拭きとるなど、その人に合ったケアをします。
高齢者に限らず、歯磨きが面倒だと思う人もいるでしょうし、歯医者さんが嫌いな人も多いでしょう。そのため、正しい口腔ケアや歯磨きの仕方を知らない事もあります。
いつまでも自分の歯で噛み、飲み込めるように口腔ケアをしていきましょう。
口腔ケアも健康維持増進には欠かせない習慣です。