高齢者への虐待
別の記事にも書きますが、介護の現場をきちんと取材していないマスコミがテレビやネットで知ったように介護を語るのはよくないと思っています。
そもそも、介護保険制度が始まって23年です。
なので、まだ介護に関してはルールも指針も手探り状態といってもおかしくないと思っています。平気で差別や虐待をしてきた世代の人達に、介護業界の方向性を作るのは不可能だと私は思っています。
早く一線から退いて介護されるようになれば良いような人たちが、医療や介護の業界をブラックにしたんじゃないでしょうか。自分たちが作ってきたものが、どれだけ人を不幸にしてきたのか考えてほしいものです。
私にはまだはっきりわかりませんが、現場で働く人たちの話やこれまで学んできた感覚から何となくそんな気がしています。これから現場で検証しながらより良い介護の方向性を見つけたいと思っています。
尊厳の保持が守られなければならない
虐待の背景
義理の父が施設に入り、高齢者福祉のありがたさを感じました。
一方で、テレビではネガティブな介護に関する情報ばかりが流されています。
私たち家族が運が良かったのか、世の中のほとんどが虐待や暴力にさらされているのかは分かりません。
ただ私は、虐待や暴力が介護の問題と言うより、今の社会における『家族の在り方』や『社会との関わり方』の問題なのではないかと思っています。
家族と介護士
施設で親を観てもらう家族の思いは、必ずしも『自宅で一緒に過ごしたい』ではありません。利用者本人も、家には帰りたいが家族に迷惑はかけたくないというのが本音のようです。自宅介護の場合、24時間誰かがサポートするのは難しいですよね。
そうなると、施設に入る方が、本人もご家族も安心かもしれません。
核家族化が進んでいるのは、人が自分の都合ばかりで物事を考えるようになった結果だと私は思っています。
人と関わるということは、必ず『相手の事も』考えて行動しないといけないからです。
一生自分の都合で生活していくためには誰かの手が必要になってきます。
高齢化が進み、事故や病気で動けなくなる人が増えるほど『介護福祉』は今後産業として大きく発展していくでしょう。
介護の仕事自体ををロボットによって代わりにやっていくのはまだまだ先の話ではないでしょうか?
介護士の作業補佐になるのは、そんなに先の話ではないかもしれません。
介護士の意識の違い
虐待の多くは、家庭で起こる事がほとんどだったようです。
私たち夫婦も、ケアマネさんから施設に入れる事を勧められました。
日々の介護は、家族じゃない方がスムーズにできるそうです。家族であれば、元気なとき、きちんとしていた時の自分の親の事を覚えています。できない事がもどかしくなったり、ついイライラしたりすることが多いようです。その点、プロの看護師や介護士は『仕事』として割り切れます。
これは、どんな仕事にも言える事ですが、こちらの思うように仕事が進まないと相手に対して反感を持ったりします。仕事がうまくいかないのは、本当に相手のせいなのでしょうか?
一番悪いのは、働きにくい環境を作っている施設責任者や会社組織の『能力の問題』。
その次に、介護の仕事に集中できていない自分や同僚、非協力的な家族の『意識の問題』。
利用者は、その姿が本人の姿ですから暴言をはこうがセクハラしようがそういう人なのです。病気と同じ認識で良いと思います。
それを受け入れるか否かは、施設が決める事。慎重に検討することが大切でしょう。
受け入れるからには、あらかじめ対策しておけば、想定外の場合の対処だけで済むはずです。なんでも思い通りにはいかないものですよね。
人として接する
時代の変化によって、家族のあり方も変わってきました。
ネットの普及でテレビ電話などで会話ができるようになり、コロナでの面会禁止が解かれて実際に合える機会も増えてきました。
ずっと一緒にいると大変かもしれませんが、定期的に笑顔で会えたり会話ができる機会を増やすことは利用者のQOLの向上にもつながります。家族の安心感にもなります。
施設に入る事への不安や、施設へ入れる事への罪悪感を感じさせないようにすることも、介護者には大切なことだと思います。お互い相手に敬意を払って接していれば、大きな問題でも解決することは可能だと私は思います。
嫌なことが重なれば、人は誰でもストレスが溜まりイライラするものです。
なにも、急にそうなったわけでは無く情報が足りなくて気づかなかったことが多いだけでしょう。
家族のような存在
介護の仕事をしていて私は思います。『家族のような』存在になることが介護士の役割ではないと思います。当然、介護技術を上げて身の回りを介護をスムーズに気持ちよく受けてもらえるように努力は必要です。
でも、利用者に求められているのは『こんな家族がいたら幸せだ』と思って過ごしてもらえるような環境作りだと思っています。
人生の最後を、幸せな時間とともに過ごしてほしいものです。
高齢者虐待防止法
知識としてまとめておきます。マスコミはこの法律の意味すらちゃんと理解していないかもしれません。
「高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律」
これが、高齢者虐待防止法です。
高齢者とは65歳以上の方をいい、この方々の権利と利益を守るための法律です。
虐待は5つあります。
身体的虐待
高齢者への「身体的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 高齢者に対し、殴る・蹴るなどの暴力を振るう
■ 高齢者やそのご家族に同意を得ることなく、不必要な身体拘束を行う
■ 「ダメ!」「やめて!」などの言葉を使い、高齢者の行動を制限する※
※ 手を出したり、縛ったりしなくても、言葉で制限することも身体的虐待にあたります(スピーチロック)
他にも多量の薬を飲ませて眠らせるとかもダメです。歩き回る人や車いすで動き回る人などの見守りは確かに大変ですが、制限することは身体拘束になります。
ネグレクト
高齢者への「ネグレクト(介護放棄)」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 入浴介助や排泄介助を行わず、不衛生な状態のまま放置する
■ 食事や水分を与えず、脱水状態になるまで放置する
■ 自宅に閉じ込め、外出したり、地域の人と交流したりする機会を与えない
これは、児童虐待にも共通します。自分がされたら嫌なことはやってはいけませんよね。介護が必要な人は自分ではできないのです。
精神的虐待
高齢者への「精神的・心理的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 「バカ」「こんなこともできないの?」など、精神的に傷つく言葉を投げかける
■ 馬鹿にするような呼び方で呼んだり、幼児言葉を使って接したりして、高齢者の尊厳を踏みにじる
■ 高齢者の言うことを完全に無視する
危険なのは、『慣れてきたとき』です。悪意は無くても、愛着を持ってやっていたとしても、周りから誤解されることがあります。信用が壊れるのは一瞬です。
特に、新人の研修や面会などが行われてい時など、細心の注意を払いましょう。
性的虐待
高齢者への「性的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 高齢者の身体を不必要にベタベタと触ったり、わいせつな行為をする
■ 「失禁した罰」と称し、高齢者を裸にして放置する
重犯罪です。また、犯罪者予備軍になります。これらの行為はやらないのは当然ですが、危険因子はすぐに取り除かなければいけません。
経済的虐待
高齢者への「経済的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 高齢者の同意なく、現金や預金を勝手に使う
■ 高齢者が所持する現金や預金を勝手に取り上げ、生活に必要なお金を渡さない
ご家族に関しても、場合によっては規制が必要ではないかと思っています。
お金に関することは本当に怖いですね。
介護施設における(訪問介護事業所を含む)最も大事な責任は『通報義務』です。
施設や事業所に言っても万が一ダメな場合には、ネットで調べたら地域の受け皿は必ずあると思います。利用者の為、ご家族の為、自分の為にも物怖じせずに通報することが大切ですね。
余談ですが、高齢者やその家族を標的にした詐欺も急増しています。
正しい知識と地域の包括支援センターなど行政へ行って、信頼できそうな良い担当者を探しておきましょう。