経管栄養とは
口からの栄養摂取ができなくなると、経管栄養と言う選択肢があります。
嚥下機能(食べものを飲み込む機能)が低下すると、気管に食べ物が入ってしまい、その食べ物についていた菌が、気管支炎や肺炎を引き起こす原因になります。
嚥下機能が低下する主な原因は、筋萎縮性側索硬化症のような難病もあれば、脳梗塞なの病気による麻痺や、筋力低下によるものなどがあります。
口から入れた食べ物は、咽頭から食道、胃へと運ばれます。
咽頭までは、食べ物も空気も同じように通過しますが、食べ物が入ってくると喉頭蓋という蓋が閉じて食べ物は食道へと運ばれます。
この、蓋を閉じる力が低下することで、『誤嚥』という気管へ飲食物が入ってしまう事がおこります。
この飲食物などに、肺炎球菌などの病原菌がいると、肺の中で増殖して肺炎を起こします。これが『誤嚥性肺炎』です。
気管より下にある気管支や肺、肺胞に至る部分を下気道といい、ここは本来無菌の状態であるはずの場所です。ここに菌が入り込むと、上気道まで戻すのは大変です。
次亜塩素酸やプロポリスを吸ったら肺の中の菌が死ぬから大丈夫とか、いい加減な話を信じないようにしましょうね。
そこで、鼻から胃まで管を通したり、直接胃や腸に管を通して栄養を運ぶ方法が、経管栄養です。点滴と違い、消化器官の働きを使って栄養を吸収するので、理屈的には『お食事』です。
ただし、『栄養不足』を病気として捉えられる人には、『治療』になるので、経管栄養の中には保険適用のものもあります。
『お食事』の違和感
学校の実習では『○○さんお食事ですよ。』と、声をかけることになっています。
私は、この『お食事』に違和感を感じます。『食べている』という実感は、本人にはないと思うんですよね。
管を通して栄養を入れる訳ですから、美味しいという感覚は無いと思います。
子供の場合、『食育』の期間が奪われてしまうので、口から食べるための練習はすごく大変だそうです。
可能性を信じて
このことは、高齢者の食事でも同じで、一度胃瘻(いろう)を始めてしまうと、口からご飯を食べることが難しくなってしまうようです。
ただ、マイナスなことばかりではありません。嚥下が弱っている間は、誤嚥を防ぐために胃瘻や経鼻経管栄養を行い、口腔リハビリを頑張ればまた口から食べられる可能性もあります。その可能性を引き出すのも、奪うのも医療・看護・介護を行う側の努力だと私は思います。
食べることは、栄養を摂取するだけでなく、美味しい・楽しいといった心の豊かさも育むものだと思います。わかっていても、『誤嚥』のリスクを考えるとどうしてもリスクを避けたくなります。ただ、それは介護する側の都合であって本人がリスクの回避を望むのではなく『我慢』しているのだという事を理解しないといけませんね。
私たちが元気なときには疎かにしがちな、『よく噛んで食べる』とか、ゆっくり味わって食べるという習慣は、将来の自分のためにも大切だと思います。